物性が異なるスラリーの影響
ビーズミルは超微粒子、ナノ粒子の生成ができる優れた超微粉砕機ですが、ビーズミルの運転条件操作には多くの条件があります。それぞれの条件を理解し、問題点を把握することが効果的なビーズミルの運転を可能にします。
スラリーの物性
湿式粉砕は処理粉体を液体によってスラリー化します。ビーズミルによる粉砕、分散操作もスラリーが処理対象物であり、スラリー化の良否が粉砕効果や処理物の製品品質に影響します。
スラリー化は生産条件や後工程の条件によって、粉体と液体(以下溶媒とする)の混合割合が異なることから、下図に示すようにスラリーの物性に違いがあります。
固形分濃度の違い
ビーズミルで処理される処理物は、微粒子化する砕料によって固形分濃度に違いがあります。増粘剤としても使用される合成マイカは、スラリーの固形分濃度が8wt%を超えると急激に増粘するため、8wt%以上の濃度ではビーズミルによる処理が困難となる場合があります。これに対して、代表的なビーズミルの大量生産物である分散剤を添加することによって低粘度で処理されています。
発熱量
ビーズミルによる粉砕分散処理は発熱を伴いますが、粉砕分散処理によって大きな熱量を発生するスラリーもあれば、発熱量の低いスラリーもあり、これは、粉体によって違いがあります。
温度に対する影響の違い
温度に対する影響にも違いがあります。スラリー温度が高温になっても製品の品質に変化のない重質炭酸カルシウムや水酸化アルミニウムのようなスラリーがある反面、農薬のように40℃を超えると原体が劣化するものや、感熱剤や樹脂などの高い温度に敏感なスラリーもあります。
代表的な低沸点溶媒であるアセトンは、粉体のいかんに係らず、蒸発防止と安全管理の目的でアセトンの沸点温度56.2℃に対して、運転温度を40℃以下にしなければならないという例もあります。
フォーミュレーション
同一染料、同一溶剤であっても、フォーミュレーションによってビーズミル処理中に粘度が著しく変化し、あるいは発熱が大きく高温度になるスラリーがあります。
まとめ
このように砕料と溶媒の種類によって、物性の異なるスラリーはビーズミルの運転に対して、いろいろな影響があることを認識しておかなければなりません。
続きはこちら
溶媒とスラリー量、スラリー供給量とミル内ビーズの流動
中山勉:「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」,工業調査会
■ 次の記事「スラリー比重と供給量」≫
■ 前の記事「固形分濃度と粉砕速度の関係」≫
■ ビーズミル技術資料一覧ページへ ≫