スラリー比重と供給量
溶媒とスラリー量
固形分に対する溶媒量の表現にはwt%とvol%があります。湿式粉砕では、温度による変化がないwt%が用いられます。wt%固形分濃度が同一でも溶媒によって容量に違いがあります。
水とエタノールでは比重が1.0:0.792ですから、水とメタノールの容量は1L:1.263Lとなり、ビーズミルによる処理量は、メタノールは水の1.263倍と著しい差となります。
異なる比重の溶媒に対して、比重が2.7の粉体を固形分濃度20wt%としたときのスラリー比重と容量の関係例を下記表に示します。
(溶媒と固形分濃度の違い)
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溶媒名称溶媒名称 | 比重 | 固形分濃度 | スラリー | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
溶媒 | 粉体 | 溶媒量(cc) | 粉体量(cc) | 比重 | 容量(cc) | 水に対する比率 | |
アセトン | 0.789 | 2.7 | 1,013.9 | 74.1 | 0.919 | 1,088.0 | 1.088 |
エチレングリコール | 1.113 | 2.7 | 718.8 | 74.1 | 1.262 | 792.9 | 0.793 |
MEK | 0.805 | 2.7 | 993.8 | 74.1 | 0.936 | 1,067.9 | 1.068 |
塩化メチレン | 1.336 | 2.7 | 598.8 | 74.1 | 1.486 | 672.9 | 0.673 |
酢酸エチル | 0.902 | 2.7 | 886.9 | 74.1 | 1.041 | 961.0 | 0.961 |
シクロヘキサン | 0.779 | 2.7 | 1,027.0 | 74.1 | 0.908 | 1,101.0 | 1.101 |
トルエン | 0.886 | 2.7 | 923.8 | 74.1 | 1.002 | 997.9 | 0.998 |
トリクロロエタン | 1.345 | 2.7 | 594.8 | 74.1 | 1.495 | 668.9 | 0.669 |
ノルマルヘキサン | 0.685 | 2.7 | 1,167.9 | 74.1 | 0.805 | 1,242.0 | 1.242 |
ブタノール | 0.810 | 2.7 | 987.7 | 74.1 | 0.942 | 1,061.8 | 1.062 |
水 | 1.000 | 2.7 | 800.0 | 74.1 | 1.144 | 874.1 | 0.874 |
メタノール | 0.972 | 2.7 | 1,010.1 | 74.1 | 0.922 | 1,084.2 | 1.084 |
表から溶媒が水とメタノールでは、1kg当たりのスラリー量は水の0.8741Lに対してメタノールは1.0842Lで、メタノールは水の1.24倍です。ビーズミルに対して、スラリーを同一容量の供給量とすると、水に対してメタノールの処理時間は1.24倍となります。
同一の粉体であっても溶媒によってスラリー量が増減し、処理時間に影響するので、生産設備の設計段階では溶媒による処理量の違いに注意しなければなりません。
スラリー供給量とミル内ビーズの流動
ビーズミルの粉砕効果は、ミル内におけるビーズの流動速度差と、ミル内のビーズ密度が重要な因子です。
スラリーの供給量が適正な範囲では、ビーズ同士が効果的な接触が行われることから、砕料粒子はビーズに確実に捕捉されて粉砕は良い結果となります。スラリーの供給量が多くなるとミル内のスラリー流速が速くなるので、ビーズが出口側に片寄り、処理物の粉砕不足や部分的なビーズの強制摩擦による発熱、ミル内部品の摩耗が顕著になります。
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スラリー化は生産条件や後工程の条件によって粉体+液体(溶媒)の混合割合が異なるため、スラリーの物性に違いがあります。
中山勉:「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」,工業調査会
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