固形分濃度と粉砕速度の関係
固形分濃度と粉砕速度
スラリーの固形分濃度が高いと処理物粒子の数は多くなり、固形分濃度が低ければ処理物粒子の数は少なくなります。ビーズミル内のビーズの数は不変ですが、スラリーは固形分濃度の違いによって処理物粒子の数は変化します。固形分濃度は低ければ処理物粒子は確実にビーズに捕捉されて粉砕速度は速くなりそうですが、濃度が低ければ必ずしもよい結果になるとは言えず、最適固形分濃度があります。
大量生産物のビーズミル運転操作では、必ずスラリーの固形分濃度と生産効率が検討されます。そして生産効率の検討はスラリーの固形分濃度と粉砕速度、スラリーの固形分濃度と生産効率に分けて検討しなければなりません。
粉砕速度と最適固形分濃度
下図は、連続式ビーズミルで重質炭酸カルシウムの粉砕速度と固形分濃度の関係について実験した結果です。20~30%の範囲に最適固形分濃度がありますが、他の物質でもそれぞれの最適固形分濃度が存在します。
スラリーの固形分濃度と粉砕速度
重質炭酸カルシウムの粉砕
連続式ビーズミルで処理物に重質炭酸カルシウムを用いて25wt%と75wt%の比較テストを行った結果が下図です。
溶媒を水、ビーズはガラスビーズで1.0~1.4mmφを使用しました。テスト機は竪型ビーズミルでディスク周速を8m/secとして4パス処理をしました。結果、固形分濃度の低い方が粉砕速度は速かったということが分かりました。
シリコンの粉砕
連続式横型ビーズミルで処理物にシリコンを用いて20wt%と30wt%の比較テストを行いました。溶媒を水、ビーズはジルコニアビーズ0.5mmφを使用し、テスト機は横型ビーズミルで6パス処理をしました。
結果は下図の通りです。固形分濃度の低い方が粉砕速度は速いですが、粉砕速度は固形分濃度の比ほどに差はありません。
固形分濃度とスラリー量・粉砕時間
固形分濃度の違いによる粉砕速度はテストデータからも明らかだと思います。ですが、ビーズミルによる粉砕速度には最適固形分濃度があります。しかし、生産効率を考えた時、粉砕速度の速い最適固形分濃度が最適な生産効率になるとは言えません。 生産効率はスラリー量が関係します。固形分濃度が低ければ溶媒量が多くなるので、処理スラリー量も多くなり、固形分濃度が高くなると溶媒量が少なくなることから、処理スラリー量が少なくなります。 固形分濃度によってビーズに捕捉される粒子の数に違いがあり、ビーズからエネルギーを受けて粉砕される粒子は、固形分濃度が低いと微粒子化が速くなると考えられますが、固形分濃度が低いとスラリー量が増大することに注意しなければなりません。
<引用・参考文献>
中山勉:「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」,工業調査会
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