ボールミルとビーズミルのコンタミネーション比較

コンタミネーション比較
ボールミルとビーズミルは粉砕媒体の大きさと粉砕力が著しく異なります。粉砕力の違いが粉砕速度と粉砕媒体の摩耗の差となります。粉砕媒体の単位容積当たり個数と表面積は、粉体媒体が小さくなると著しく増加します。
ビーズミルは媒体が小径で個数が多くなると、ビーズによる粉砕処理物の捕捉頻度が増加して粉砕を促進しますが、ビーズ同士の衝突・摩擦頻度も多くなり、ビーズ表面積が多いことがビーズの摩耗を促進します。
ボールミルとビーズミルで主に比較される項目は、a)粉砕時間、b)コンタミネーション、c)処理粒子の表面状態、d)後工程の処理条件などです。
粉砕時間はビーズミルが圧倒的に短く、時間の単位はビーズミルの分〔min〕単位に対して、ボールミルは時〔hr〕や日〔day〕となります。コンタミネーションはビーズミルがボールミルの数10から数100倍と桁違いに多いです。
チタン酸バリウム
チタン酸バリウムの粉砕で、ビーズミルのディスク周速とビーズの摩耗量を確認しました。
チタン酸バリウムは用途によって純度が厳しいです。生産効率と粉砕媒体ビーズの摩耗によるコンタミネーションの動向を把握する目的で行ったデータを図Aに示します。

図A:ディスク周速とビーズ摩耗量
この図から、遠心効果とコンタミネーションの関係を以下の表にまとめました。
遠心効果とコンタミネーション
粉砕室容量と粉砕室材質 | 粉砕室容量:2L 粉砕室材質:ZTA | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
処理物とビーズ | チタン酸バリウム+水 Zr2O3ビーズ0.5mmφ | ||||||||
ディスク | ディスク材質:Zr2O3 ディスク径:95mmφ | ||||||||
ディスク周速〔u/sec〕 | 0.7 | 1.0 | 2.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 8.0 | 10.0 | 12.0 |
回転数〔rpm〕 | 141 | 201 | 402 | 805 | 1,006 | 1,207 | 1,609 | 2,011 | 2,413 |
遠心効果Z | 1 | 2 | 9 | 34 | 54 | 77 | 137 | 215 | 309 |
コンタミネーション | ー | ー | ー | ー | ー | 7 | 17 | 24 | 30 |
テストは溶媒が水、ビーズは0.5mmφジルコニア、撹拌ディスクはジルコニアとし、低速回転で粉砕効果の高いピン付きディスクです。粉砕室材質は熱導度が優れているジルコニア強化アルミナ(ZTA)としました。図Aによると、ビーズの摩耗はディスク周速の影響が顕著です。
粉砕室のジルコニア強化アルミナ(ZTA)は、摩耗によるアルミナの混入は周速の影響を受けません。撹拌ディスクやジルコニアはビーズの衝突摩擦の影響を受けますが、全体の表面積が小さいことから摩耗量は少なくなります。
図Bは上表の遠心効果とコンタミネーションを図示したものです。

図B:周速と媒体の摩耗
ビーズミルの撹拌機構はいろいろな種類があります。低速回転で粉砕効果を発揮するピン付ディスクでも、遠心効果が40G以下では媒体ビーズの摩耗が急減します。これはミル内の流動が層流状態となり、ビーズの運動エネルギーが小さくなることから、粉砕速度も急激に低下してコンタミネーションも急速に減少します。
ビーズミルは粉砕媒体の個数が多いことから、低速運転でもビーズ同士の衝突・摩擦頻度が多く、ビーズ表面積が大きいことがビーズの摩耗を促進します。
したがって、低速で目的の粒子径を得るためには粉砕媒体の質量が大きいボールミルが有利になります。遠心効果が1Gのボールミルは、粉砕速度が遅いですが、粉砕媒体の摩擦によるコンタミネーションも少ないことが明らかです。
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