ビーズミルの今後の展望2
ビーズミルに代わる技術
コンタミネーションの防止や、エネルギーの与え方により超微粒子の特性が異なるなどから、ビーズミルに対抗する技術が進んでいます。今後、ビーズレス粉砕を目指した超臨界場での処理、超音波照射、キャビテーションなどを応用した技術が注目されています。
歴史の古いボールミルは今でも根強い需要があり、ビーズミルの良さを知りながら既存の設備では、ボールミルで製造した超微粒子の特性と、ビーズミルで製造した超微粒子の特性に違いがあり、後工程の設備変更が必要となることから導入を断念したケースが多いです。
ビーズの摩耗に起因するコンタミネーションに対して、ビーズレスのミルが台頭しています。
たとえば、高圧流体衝突ミルは粉体を溶媒でスラリー化した液体を200~250MPaの超高圧に昇圧してこれを2流路に分岐して、再度合流する部分で衝突させることによって粉砕を行います。
あるいは超高圧に昇圧して、高速流で特殊なノズルを通過させ、超高速流とすることで衝撃は(キャビテーション)を発生させて粉砕します。
異なる方法では、円板高速回転ミルは微小クリアランスを保持した2枚のディスクの回転で、高せん断力を発生させて砕料粒子を粉砕します。回転ディスクには放射状の溝が付けられていて、高速回転時に増圧機能が働き2枚のディスク間隔を押し広げる力が発生します。これによって、2枚のディスクのクリアランスは1μmから数μm程度で、非接触機構によりディスクは50~100m/secの超高速運転が可能です。微小クリアランスであることから流体境界層内部での高速度せん断力により、砕料の微粒子化が行われます。低粘度から高粘度まで対応でき、メディアレスのためコンタミネーションの発生を防止できるといいます。
困難な理論的解明
ビーズミルの処理製品は粉体、溶媒、添加剤、固形分濃度、前処理のプレミキシング、ビーズミルの特徴などが大きな影響を及ぼします。
ビーズミルの処理製品はフォーミュラー、粉体と溶媒、固形分濃度と粘度、分散剤の種類と添加量、摩耗とコンタミネーションなどが影響します。処理操作ではプレミキシングの良否、ミル内供給量と滞留時間、処理物の温度と発熱の制御、ミルの構造と運転条件(撹拌機構の回転数)、ビーズ(材質、径、充填量)などが影響します。
ビーズミルはメーカーによって、ミルの形式、撹拌機構、ビーズ分離機構、冷却方式、供給量、発熱の制御方法が異なります。フォーミュラー、粉体と溶媒、固形分濃度と粘度などはビーズミルユーザーの決定事項であり、ビーズミルメーカーにはブラックボックスです。
ビーズミルにはブラックボックスが多いです。ビーズミルは経験と勘、アイデアと実験の繰り返しによるトライ・アンド・エラーによって、シングルナノメートル粒子に近い粒子生成ができるところまで来ました。
パウダーと言ってもよい極小ビーズによる連続式ビーズミルがscienceにとどまらず、高粘度、高固形分濃度の処理物に対応したengineeringまで展開されることを期待します。
そして、供給された処理物が粉砕室内で物性が刻々と変化しながら排出されますが、大型化した時、小型機では予測できなかった摩擦や粉砕室内における流動、伝熱などに対する理論的解明、そして生産規模に至るスケールアップの理論的解明が待たれます。
ビーズミルによる処理物は多種多様であり、いずれも物性が異なります。多種多様な処理物に対して、これを処理するビーズミルにも多くの機種があり、それぞれが異なる特徴を持っています。こうしたことから、あらゆる砕料に対して1機種1台で対応できるというビーズミルはありません。砕料と微粒子化目的によって対応する機種が異なります。
2000年以降のナノ粒子生成ブームで、各企業は機密を強化しています。しかし、ビーズミルにも処理物にもそれぞれに特徴と特性があります。ビーズミルの分散・粉砕性能と製品の品質を左右する要因には、機械的な性能要因と製品の品質要因とがあります。この2つが合致することで目的の処理物製品を得ることができます。
ビーズミルによる超微粉砕は固形分濃度と粉砕速度、処理物の粘度と流動、発熱と製品の劣化、コンタミネーションなどの課題が多くあり奥が深いです。時には想像を超える現象が起こることがあり、これを解決するためには多くの知識が必要です。ビーズミルの導入でトラブルを生じないためには、ユーザーとメーカーがお互いの知見を開示しあうことが肝要です。
<引用・参考文献>
中山勉:「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」,工業調査会
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