nanotech2017【3】超低温粉砕
ビーズミルの原理
超低温粉砕とこれまでのビーズミルの粉砕と何が異なるのか簡単に説明します。従来のビーズミル
回収物はスラリー
超低温粉砕ビーズミル
ビーズをドライアイスビーズに置き換えることで粉砕時は液体状態の超低温の窒素雰囲気で粉砕する。
回収物はパウダー
⇒湿式のビーズミルの微粒子化性能を持ちながら乾式の粉体を得ることが出来ます。 ビーズミルのコンタミが嫌というお客様でもドライアイスビーズならばコンタミフリーで粉砕することができます。
ポイント
- 原理はビーズミル=優れた微粒子化性能
- -196℃で熱変性防止・脆性破壊
- ドライアイスビーズ使用でクリーン粉砕(コンタミフリー)
- 凝集物をソフトに解砕
- 完全窒素(不活性)環境中での粉砕
- 飛散・分離の改善
⇒液体という限られた空間に粉を留める⇒設備環境に対してクリーン・高効率処理
超低温粉砕ビーズミルLNMの構造
運転フロー
こちらで液体とガスが入り混じった窒素を液体だけのものとし安定した液体窒素を処理室内に送液できるように工夫されています。
液体窒素の管理
常時気化していく液体窒素は重量管理し自動運転することが可能です。ミル本体に設置してあるサーバータンク内にしようする液体窒素を充てんします。
こちらは液面で管理します。その後アイメックス独自のポンプでミル処理室内、ベッセル、シャフト、ディスク、モーターケースといったミルすべてを重量で記録し、気化した分の液体窒素を随時送り込んでいきます。
長時間運転時の様子
試作機 |
実機 |
試作機では超低温下ということで長時間運転すると霜がついたり重量が変化したりハンドリング面で問題がありましたが、実機では真空容器を使用することで-100℃以下の状況でも霜の付きを軽減できました。
処理事例
熱硬化性樹脂
処理物 | 熱硬化性樹脂 |
ビーズ | ジルコニア φ1.0mm |
ドライアイス φ0.5mm |
従来のビーズミルや乾式の粉砕機では粉砕が難しい樹脂ですが、液体窒素ビーズミルを使用することで粉砕することができました。
また、ジルコニアビーズとドライアイスビーズでの粉砕の比較では、 ドライアイスビーズでもジルコニアビーズ以上の粉砕結果が得られました。
SEM画像
×1000
ウレタン樹脂の粉砕
やわらかく粉砕しにくいウレタン樹脂を粉砕した事例です。
液体窒素によって脆くなった樹脂を粉砕することができました。
フェニトイン(医薬品)
難溶解性の原薬のフェニトインという抗てんかん薬を処理した時の粒径の変化です。 このミルはコンタミフリーの特徴を持っているため、医薬の分野で期待されています。
処理前は11µmで、ドライアイスビーズを使用して処理すると0.9µmとなりました。 乾燥粉体を得られながらサブマイクロレベルの粒子も60%以上ある結果となっております。
乾燥装置の有効性
温風を当てることで瞬時に液体窒素を気化。
液体窒素を常温で気化させ粉体を得る
液体窒素が気化して粉を得る際、若干凝集してしまうことがあります。(右図:静置して常温で気化) この液体窒素気化時の凝集を防ぐ目的で、アイメックスでは瞬時に乾燥させ粉体のみを回収する装置を試作しました。 いわゆるノズル式のスプレードライのような構造で液体窒素に懸濁した処理物を瞬時に乾燥させることができます。
ガラスの粉砕
処理物 | ガラス粉末 |
ビーズ | ジルコニア φ1.0mm |
回転数 | 2500rpm |
Φ1.0mmビーズで処理をしてD50値が平均10µm、最大径100µm以上のものを短時間で3µm程度まで粉砕し、しかも乾式で粉砕した事例になります。
SEM画像
まとめ
- 原理はビーズミル = 優れた微粒子化性能
- 粉砕後はパウダー回収
- ドライアイスビーズ使用でクリーン粉砕(コンタミフリー)
- 飛散・分離の改善
⇒ 液体という限られた空間に粉を留める
⇒ 設備環境に対してクリーン・高効率処理 - 樹脂の粉砕
- 難溶性薬物の溶出性の向上