摩耗とコンタミネーション
摩耗とコンタミネーション
固体に機械的なエネルギーを与えて粉砕、解砕、分散が行われることから、機械を構成する部材や、粉体媒体の摩耗は避けることはできません。部材や粉砕媒体の摩耗によって処理製品に対するコンタミネーションが問題となります。
摩耗が直ちにコンタミネーションになるわけではないので、摩耗とコンタミネーションは分けて考える必要があります。摩耗は機械の性能や寿命に大きく関係しランニングコストに影響します。これに対してコンタミネーションは機械の性能や寿命に影響しない極微量の摩耗粉の混入が大きくクローズアップされます。
湿式粉砕におけるコンタミネーションは、乾式粉砕や粉体輸送などにおける異物の混入によるコンタミネーションとは異なり、極微量の成分が混入したことで製品に大きなダメージを与えることがあります。
媒体撹拌ミルによって大量生産処理が行われている処理物である炭酸カルシウムや汎用塗料などはコンタミネーションよりもランニングコストから耐摩耗に重点が置かれます。それに対して電子部品材料や医療材料はコンタミネーション防止の観点から耐摩耗が重要視されます。
重質炭酸カルシウムは、天然資源であり含有成分も産地によって異なります。粉砕機部材や媒体の摩耗によるコンタミネーションは問題にはなりません。大量生産処理であることから部材やビーズの摩耗はかなり顕著であるが、摩耗粉は単位処理量に対してはごく微量です。
医療品である歯科材料のガラスはサブミクロン粒子ですが、金属にウレタンライニングを施したミルが、運転による経時変化で微小なピンホールができるとたちまち処理性能に影響して、白い粉体を溶媒で練るとねずみ色になります。微量でも混入することでコンタミネーションが危惧される処理物は医療品の歯科材料に限らず、多岐にわたって存在します。
コンタミネーションは、汚染物質が数ppmであったとしても問題になります。コンタミネーション防止は、製品に影響する物質を絶対に混入させないという前提で対処しないといけません。
コンタミネーション防止対策は処理物に対して安全な材質を選定することに尽きます。これはビーズミルユーザーの知見で選定しなければなりません。時には熱伝導率の小さいゴムやプラスチックを粉砕室(ベッセル)に用いますが、スラリーの温度制御に配慮した設計や運転条件の設定はミルメーカーが行います。また、ビーズの摩耗防止には低速回転で粉砕効率の高いミルを選定することが肝要です。
よくある質問
コンタミネーションはありますか?なるべく抑えたい。前記事はこちら
硬い砕料による摩耗、ビーズの摩耗、溶媒と摩耗
粉砕室部材の摩耗(ビーズ分離部・撹拌機構・ビーズ分離部)
中山勉:「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」,工業調査会
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