粉砕媒体のビーズについて
粉砕媒体ビーズはビーズミルの性能を左右するので、ビーズ径と材質の選定は極めて重要です。
ビーズミルに用いるビーズは、コスト、粉砕効率、耐摩耗性、成分の安定性、機械の構造材料、摩耗粉による製品への影響などから慎重に選定しなければなりません。その中でもビーズ径は処理物の対象粒径で選定されますが、目標粒子径の微粒子化に伴い使用ビーズの小径化が急速に進んできました。
粉砕媒体ビーズの進化
材質の多様化
1952年、デュポン社のサンドグラインダーが開発された時は、粉砕媒体としてオッタワサンド(天然シリカ)が使われていました。
ビーズミルの粉砕媒体として、ビーズはオッタワサンドに続いてガラスビーズ(汎用、高比重、低アルカリ)が採用されました。
セラミックスは1975~1990年頃まで、新素材としていろいろな業界で積極的な研究開発が行われ、粉砕媒体として耐摩耗、高比重、コンタミネーション防止のニーズからセラミックスビーズが加わりました。粉砕媒体ビーズとしてアルミナビーズ、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズ(ジルコニア・シリカ系セラミック)が登場しました。さらにサイアロンビーズや、窒化ケイ素ビーズがコンタミネーション防止のニーズから用いられるようになりました。
これは処理物の多様化に伴い、コスト、粉砕効率、耐摩耗性、コンタミネーション防止などのニーズから、粉砕媒体ビーズの材質も幅広く要求されるからです。
粒径の小径化
ビーズミルの創成期は、オッタワサンドやガラスビーズの粒径は1.0~3.0mmφが使用されましたが、ビーズミルの拡大期では、処理物の目標粒子径が微粒子化してきたことから、ビーズ径の小径化が顕著になってきました。1980年ごろから比重の大きいジルコニアビーズが出現したことで、粉砕媒体ビーズ径は急速に微小化して、現在ではナノ粒子生成に50~10μmφのセラミックスビーズが使用されています。
ビーズ径と個数、ビーズ径と体積の比
ビーズの単位容積当たりの個数は径の3乗に逆比例し、質量とディスクやピン、アームの回転による遠心力がビーズに与える運動エネルギーは、ビーズ径の3乗に比例します。
粒子が微粒子になると、強いエネルギーを与えるよりも、粒子がビーズに捕捉される頻度を高めるために、個数の多い小径ビーズを使用することが望ましいとされています。
【ビーズ径と個数比】
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ビーズ径 (mmφ) |
ビーズ径と個数比 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2.0 | 1.5 | 1.0 | 0.8 | 0.5 | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 0.05 | 0.03 | |
0.03 | 296,300 | 125,000 | 37,100 | 18,963 | 4,638 | 1,000 | 296 | 37 | 4.6 | 1 |
0.05 | 64,000 | 27,000 | 8,000 | 4,096 | 1,000 | 216 | 64 | 8 | 1 | |
0.1 | 8,000 | 3,375 | 1,000 | 512 | 125 | 27 | 8 | 1 | ||
0.2 | 1,000 | 422 | 125 | 64 | 15.6 | 8 | 1 | |||
0.3 | 296 | 125 | 37 | 19 | 2.4 | 1 | ||||
0.5 | 64 | 27 | 8 | 4.1 | 1 | |||||
0.8 | 15.6 | 6.6 | 2 | 1 | ||||||
1.0 | 8 | 3.4 | 1 | |||||||
1.5 | 2.4 | 1 | ||||||||
2.0 | 1 |
【ビーズの体積比と遠心力比】
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ビーズ径(mmφ) | ビーズの体積比、遠心力比 | |||||||||
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2.0 | 1.5 | 1.0 | 0.8 | 0.5 | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 0.05 | 0.03 | |
0.03 | 1 | |||||||||
0.05 | 1 | 2.4 | ||||||||
0.1 | 1 | 3.4 | 8 | |||||||
0.2 | 1 | 8 | 6.6 | 15.6 | ||||||
0.3 | 1 | 3.4 | 27 | 27 | 64 | |||||
0.5 | 1 | 4.6 | 15.6 | 125 | 125 | 296 | ||||
0.8 | 1 | 4.1 | 19 | 64 | 512 | 422 | 1,000 | |||
1.0 | 1 | 2 | 8 | 37 | 125 | 1,000 | 3,375 | 8,000 | ||
1.5 | 1 | 3.4 | 6.6 | 27 | 125 | 421.9 | 3,375 | 27,000 | 64,000 | |
2.0 | 1 | 2.4 | 8 | 15.6 | 64 | 296.3 | 1,000 | 8,000 | 125,000 | 296,300 |
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<引用・参考文献>
中山勉:「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」,工業調査会
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