nanotech2016【3】迅速な実験のために
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迅速な実験のために
ユーザーが設定可能かつ結果に影響を与える因子
ビーズ材質
高比重のものが分散効果が高い。コンタミネーションの最も多い箇所。
製品特性、摩耗、コストを考えて選定する必要がある。
ジルコニアかガラスが一般的。
ビーズ量
ビーズ量に比例して処理効率が上昇する傾向にあるが、同時に異常発熱や摩耗の原因となる。
ビーズ径
処理前粒子径の10倍、目標粒子径の1000倍の大きさが目安。
硬い試料の場合は大きいビーズで大きなエネルギーを与えなければ良い結果が得られない場合がある。
大きいエネルギーを必要としない分散処理、あるいはナノレベルまでの分散などで
大きいエネルギーを与えたくない場合においては微小ビーズが有効である。
ディスク周速
対象物によって適正周速は異なる。高周速は凝集原因の1つでもあり、
発熱、摩耗のことを考えればできる限 り低周速での処理が望ましい。
スラリー配合
凝集や増粘などミル処理によって生じる現象は、機械的条件で回避可能な場合もあるが、
ウエイトの大部分は配合にかかっている。特に、ナノレベルの分散は添加剤による影響が大きい。
生産効率と分散効率にも大きく影響する。
固形分濃度変化によっても分散効率は変化し、生産効率を踏まえた決定が必要。
スラリー粘度
スラリー配合により増粘する場合もあるが、処理前からの極度の高粘度はミルの安定運転上好ましくない。
圧力上昇や効率低下の原因にもなる。
ポンプ吐出流量
循環運転方式の場合、吐出流量を多く設定し、循環回数を増やした方が
粒度分布がシャープになる傾向がある。圧力変化を伴うファクターであり、
増やし過ぎるとビーズの偏りを引き起こしたりする。メカシール圧とのバランスも重要。
複雑に絡むビーズミルの性能因子~どのように条件を決定するか?~
STEP1
粉砕 or 解砕の見極め
着眼点
投入エネルギーに対して粒径進捗の反応が良いか?
粉砕:処理強度重視 ⇔ 解砕:処理頻度重視
(例:周速を上げるほど微粒子化が進捗する≒粉砕)
経験則として粉砕処理のほとんどの場合でΦ0.1mm以下のビーズは効果薄
STEP2
ビーズ径の選定
着眼点1
目安は目標粒子径の1000倍(目標0.5μm⇒ビーズΦ0.5mm)着眼点2
処理前粒子径(最大径も考慮)と目標粒子径の比着眼点3
粘度高粘度処理で小径ビーズの使用は効果薄 着眼点4
エネルギー過多で結晶構造は変化しないか?
・一般的に、数百μm~ミリオーダーの粒子粉砕にはΦ1.0mm以上が必要
・ビーズの動きが極端に悪くなるようでは×
STEP3
濃度の決定
着眼点1
処理経過によって極端に増粘するか?
増粘が極端な場合:同一ビーズで処理可能か?圧力・温度は大丈夫か?
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濃度によって到達限界粒子径が変わるか?
一般的に、濃厚系の方が分散速度が遅いが、生産効率は高い。
濃度が到達限界粒子径へ影響することも多々ある。
STEP4
周速(回転数の設定)
着眼点1
結晶構造は変化しないか?着眼点2
再凝集しないか?着眼点3
温度制限はクリアできるか?
・ナノ分散において、結晶性の維持・再凝集防止のために低周速運転が主流
・ビーズの動きが極端に悪くなるようでは×
・粉砕の場合は高周速が基本。発熱・コンタミの問題から、どれだけ低周速で高効率処理できる装置かが問われる。
STEP5
送液量の決定、運転方式の決定(パスor循環)
着眼点
目標までの到達時間(パス回数)は?
目標までの到達時間が長い(10パス以上)場合:大流量循環運転が主流
方式 | 管理方法 | メリット | デメリット・注意点 |
---|---|---|---|
大流量循環運転 | 時間 | ・処理効率アップ ・シャープな粒度分布(注意) ・タンク1つで手間いらず |
・圧力上昇 ・温度上昇 ・ビーズの偏り ・摩耗増 ・目標までの循環回数 ・粗大粒子残の可能性 ・N倍処理≠時間N倍 |
パス運転 | パス回数 | ・1パス処理でシンプルな生産ライン ・N倍処理≠時間N倍 ・未処理粒子がない |
・多パス運転時はタンク切替が必要(自動化可能) ・初期コスト(撹拌機、タンク等)増 |
STEP6
結果分析(一例のご紹介)
途中から増粘が顕著だった
・過分散で再凝集したか?
・増粘によってビーズの動きが悪くなった?
・濃度を下げないと処理できないか?
・大径ビーズを使用すれば期待できるか?
途中で進捗が頭打ちになった(粒径進捗が極端に遅い)
・もっと小径のビーズの方が効果的?
・進捗が遅いのはエネルギー不足?
・希薄系にしたら分散できるかも?
粗大粒子が残っている。もっとシャープな分布にしたい
・循環回数が不足していたか?
・送液量はこれ以上増やせないか?
・パス運転で確認するか?
・選定したビーズ径では粗大粒子の対してはエネルギー不足?
AIMEXはバッチ式による条件検討テストを推奨します
- 圧倒的に部品点数が少なく、分解洗浄が楽(洗浄10分、分解組立30秒)
- 水道水での冷却も可。100V電源と簡単操作で設置後すぐに運転開始。
- 多筒同時運転可(最大6条件同時処理)
ポンプがあると…
- 高密度試料などで沈降滞留物が悪影響する!?(配管詰まりなど)
- 「送液量L/min」によっては余計なトラブルも発生!?(発熱・圧力上昇)
- 条件数が減って検討しやすくなる
- 対応ビーズ径を気にしなくて良いため、柔軟な検討が可能
- ビーズは後からフィルタリングで除去
- 30mLから処理可能で、高価な試料にも最適
- 装置内残留スラリーによるロスも最低限に
- 傾向をつかむ⇒後々の生産条件検討の迅速化
事例
A社の場合|ビーズミル初検討- 処理物: 無機酸化物スラリー 10 wt%
- 処理前粒径: D50 = 6 mm, D99 = 50 mm
- 目標粒子径: D50 = サブミクロン(小径であればあるほどいい)
- 将来的には量産 ⇒ 連続機
バッチ式TSGによる多筒同時運転で処理可否検討 さらに短時間にビーズ径比較=連続機選定 |
<基本データ>
処理物 | 無機酸化物スラリー10wt% |
---|---|
使用機種 | バッチ式TSG-6U |
ディスク周速 | 4.2m/s |
ビーズ | φ1.0,0.5,0.3,0.1mmジルコニアビーズ |
目標粒子径 | D50<1μm |
試験結果
処理最適ビーズはΦ0.5 or 0.3 mm
•Φ 0.1 mmはエネルギー不足、Φ 1.0 mmはビーズ充填数が低いため処理速度で負けた
•粘度上昇等なし。固形分濃度増加で収率アップの可能性
ビーズ自体のコストパフォーマンス・ハンドリングは Φ 0.5 mm > Φ 0.3 mm
⇒Φ0.5 mm採用 ・ 選定連続機:NVM
循環量と処理量
D50はほぼ同一
D90は処理量が多いほど大→ 循環運転では処理量が増えると処理むらが大きくなる
D90の差は経時的に解消