カーボン系材料の分散とは?種類・凝集・粘度の課題を解説
公開日:2026年10月2日
「カーボン(carbon)」は英語で元素としての「炭素(C)」を指す言葉ですが、工業・材料分野で「カーボン」と呼ばれる場合は、炭素を主成分とする材料・製品群全体を指すことがほとんどです。カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)、黒鉛(グラファイト)、グラフェンなど、構造も特性も大きく異なる材料が「カーボン材料」として一括りに扱われており、電池電極の導電助剤をはじめ、印刷インク・塗料・ゴム・電子材料など幅広い産業で活用されています。
カーボン系材料の分散とは、炭素材料の凝集体を粒子・繊維単位までほぐし、液中や樹脂中に均一に行き渡らせる工程のことです。カーボン系材料は種類ごとに形状・構造が大きく異なり、分散の課題や適した処理方法も一様ではありません。
同じ炭素原子から構成されていても、原子の結合構造が異なるだけで、導電性・強度・比表面積・熱伝導性といった特性は大きく変化します(※1)。この構造の違いこそが、カーボン材料ごとに分散のしやすさや扱い方が異なる理由でもあります。
本記事ではアイメックスが実際にビーズミル・3本ロールミルで取り組んできたカーボン材料の分散・混練実績に基づき、材料ごとの分散課題の違いや処理条件の考え方まで解説します。
カーボン系材料の種類と主な用途
カーボン系材料は形状・構造によって特性が大きく異なり、用途も多岐にわたります。
| 種類 | 形状・構造 | 主な用途 | 主な分散課題 |
|---|---|---|---|
| カーボンブラック(CB) | 粒子状(20〜300nm)。鎖状に連なるストラクチャー構造を持つ | 電池電極の導電助剤・印刷インク・塗料・ゴム補強・導電性プラスチック | ストラクチャーの解砕が必要 |
| CNT(カーボンナノチューブ) | チューブ状 | 電池電極の導電助剤、導電フィルムなど | 繊維の絡み合い・折損に注意 |
| 黒鉛・グラファイト | 薄層板状(鱗片状〜塊状) | 電池負極材・潤滑剤・導電材・耐火物 | 層間剥離・均一分散 |
| グラフェン | 1枚のシート | 導電性フィルム、熱伝導シートなど | 凝集・再積層のしやすさに注意 |
| VGCF(気相成長炭素繊維) | 繊維状(直径150nm程度・長さ数〜十数μm) | 電池正極・負極の導電助剤。CBとの併用も多い | 繊維の絡み合い・折損に注意 |
| カーボンブラック複合材 | CB+金属(Ni・Ag等)の複合 | 導電性ペースト・電子部品・センサー | 材料間の均一混合が重要 |
CNT(カーボンナノチューブ)については「CNT(カーボンナノチューブ)とは?種類・用途・電池電極への分散技術を解説」ページで詳しく解説しています。
カーボン系材料の幅広い用途
カーボン系材料が使用されているものとして、私たちの身近にあるものはタイヤ、プリンターの黒インク、鉛筆の芯などが浮かぶかと思います。それ以外にもカーボンは多くの産業で使われています。
| 用途 | カーボン系材料の役割 |
|---|---|
印刷インク・塗料![]() |
黒色顔料として高い着色力を発揮。耐久性・定着性の向上にも寄与(※2) |
ゴム・タイヤ![]() |
カーボンブラックはタイヤの耐摩耗性を向上させる補強材として不可欠(※2) |
導電性プラスチック・フィルム![]() |
静電防止・導電性付与の目的でCBを配合。帯電防止フィルム・燃料配管等に使用(※2) |
電子部品・導電性ペースト![]() |
CB・グラファイト・金属複合材を3本ロールミルで均一混練し、導電ペーストや電極ペーストを製造 |
電池電極(正極・負極)![]() |
CBおよびVGCFを導電助剤として添加。均一分散が内部抵抗・サイクル特性を左右する。 |
カーボン系材料の分散が重要な理由
カーボン材料は優れた機能性を持つ一方で、「扱いにくい材料」としても知られています。その理由は、以下のような性質に起因します。
凝集しやすい
カーボン材料は比表面積が大きく、粒子同士が引き合う力(ファンデルワールス力)が強いため、放置すると凝集体を形成しやすい性質があります。(※3)
高粘度になる
凝集した粒子はスラリーや塗料中で三次元的な構造(ネットワーク構造)を作りやすく、少量の添加でも粘度が急激に上昇することがあります。
導電性が左右される
カーボン材料本来の導電性を発揮させるには、適切な分散状態と、他の材料との導電ネットワークの形成が重要です。凝集した状態では、期待した導電性が得られないことがあります。
均一分散が品質に直結する
分散が不十分だと、塗膜の外観不良、電池特性のばらつき、機械的強度の低下など、最終製品の品質に直接影響します。
このように、カーボン材料の性能を最大限に活かすためには、「分散」という工程が非常に重要な意味を持ちます。カーボン材料は種類ごとに形状や性質が大きく異なり、最適な分散方法も変わります。
カーボン系材料と固形分濃度・高粘度の関係
カーボン系材料の分散でお客様からよくいただくご相談の一つが、「固形分濃度をどこまで上げられるか」という点です。アイメックスがこれまで対応してきた分散実績の中には、材料の形状によって固形分濃度と粘度の現れ方が大きく異なった事例があります。以下はその一例です。| 材料の形状 | 固形分濃度の例 | 粘度の例 |
|---|---|---|
| 粒子状(カーボンブラック・活性炭など) | 10wt%前後 | 数百mPa・s程度 |
| 層状結晶(黒鉛など) | 13~15wt%程度 | 数百~数千mPa・s程度 |
| 繊維状(CNTなど) | 4~5wt%程度 | 20~30万mPa・sに達した例あり |
いずれも個別の処理条件下での一例であり、同じ材料でも一次粒子径・表面処理・溶媒や分散剤の種類・分散度合いによって結果は変わります。そのうえで、上記の事例では、CNTのような繊維状材料は、アスペクト比(長さと直径の比)が大きいことなどが影響し、少量でも繊維同士が絡み合ってネットワーク構造を作りやすく、固形分濃度がわずか4〜5wt%程度でも20万mPa・sを超える高い粘度に達しています。用途によっては、固形分濃度を1wt%前後まで下げて扱うケースもあります。
一方、カーボンブラックや黒鉛のような粒子状・層状の材料は、この事例では10〜15wt%程度までは比較的粘度上昇が緩やかでした。ただし、いずれの材料も分散が不十分で凝集が残っていると、想定より粘度が上がりやすくなる点は共通しています。
固形分濃度と粘度の関係は材料や処理条件によって個別性が大きいため、「できるだけ高濃度で処理したい」というご要望に対しては、実際にラボテストで確認しながら、装置・処理条件をご提案しています。
アイメックスのカーボン系材料処理実績
| 種類 | 使用装置 | 内容 |
|---|---|---|
| カーボンナノチューブ(CNT)NMP系 | ビーズミル(NVM等) | CNTスラリーの分散・導電材分散 |
| カーボンナノチューブ(CNT) | ビーズミル(NVM等) | CNT分散における粘度・送液性の確認 |
| カーボン+金属(NMP系) | ビーズミル(NVM等) | カーボン複合材料・金属含有スラリーの分散 |
| カーボンブラック | ビーズミル(RMBⅡ) | 条件出し(カーボンブラックの粒子径調整)・スケールアップ検討 |
| 導電性ペースト(Niなど含有) | 3本ロールミル | 導電性ペーストの混練・均一化 (粒子径目標数μm) |
| カーボン・グラファイト+銀・銅・ニッケル | 3本ロールミル | 導電材料の混練・分散 |
上記はラボテスト・試験段階の実績を含みます。詳細な処理条件・対応可否はお問い合わせください。
カーボン系材料に適した分散装置
カーボン系材料は形状・構造によって分散の課題が異なるため、装置の選定もその特性に応じて検討する必要があります。
ビーズミル

CNTやVGCFのような繊維状材料の絡まりをほぐす処理、カーボンブラックのストラクチャー解砕、カーボン+金属複合材料のNMP系スラリー分散など、微細な粒子径までの分散や連続処理・量産化検討に適しています。特にCNTやVGCFの分散では、過分散による繊維の折損・電気伝導性の低下を避けるため、ビーズ径や処理条件の見極めが重要になります。
3本ロールミル
導電性ペーストなど高粘度材料の混練・均一化に適しています。カーボンブラック・グラファイト・金属粉(Ni・銀など)を含む複合材料を、ロール間のせん断力で均一に混練・分散させます。
どちらの装置が適しているかは、材料の形状(粒子状・繊維状・層状)や目標とする粒子径、生産規模によって異なります。アイメックスでは、カーボン材料の特性に応じてビーズミル・3本ロールミルのラボテストを行い、最適な装置・処理条件をご提案しています。
アイメックスのカーボン系材料分散ラボテスト・ご相談
- カーボン系材料(CB・CNT・グラファイト・VGCFなど)の分散条件が決まらない、量産で再現できない
- 材料特性に適したビーズ径・処理条件を検証したい
- 粒子径(D50・D90など)や粘度の目標値設定・達成方法を相談したい
- ラボ機から生産機へのスケールアップを検討している
- CB+CNT、カーボン+金属など複合系のスラリー設計に困っている
カーボン系材料の分散に関するよくあるご質問
カーボン系材料の分散に関してよくある質問をまとめました。
Q.
カーボンと炭素は同じ?
A.
「炭素」は元素そのものを指す言葉です。それに対して「カーボン」は、工業・材料分野では炭素を主成分とする材料群(カーボンブラック、CNT、黒鉛、グラフェンなど)の総称として使われることが多く、厳密には同義ではありません。
Q.
カーボンブラックと黒鉛の違いは?
A.
Q.
カーボン系材料はなぜ凝集しやすいのですか?
A.
カーボン系材料は比表面積が大きく、van der Waals力(分子間引力)によって粒子・繊維同士が引き合いやすい性質があります。特にCNTやVGCFのようにアスペクト比(長さと直径の比)が大きい材料は絡み合いやすく、カーボンブラックのような微細粒子はストラクチャー(凝集構造)を形成しやすい傾向があります。ビーズミルや3本ロールミルのせん断力で凝集を解砕しますが、材料によって最適な処理条件は異なります。
関連ページ
ビーズミル・3本ロールミルに関するお問い合わせ
出典・参考情報
※1 炭素の結合構造(sp/sp2/sp3)による特性差:群馬大学 尾崎研究室https://jozaki-carbon-lab.ees.st.gunma-u.ac.jp/2476
※2 三菱ケミカル「カーボンブラックの用途例」(印刷インク・塗料・ゴム補強・導電性付与など幅広い用途を解説) http://www.carbonblack.jp/cb/youto.html
※3 カーボンブラックの凝集メカニズム(ファンデルワールス力):カーボンブラック安全性情報
https://carbonblack.biz/safety04.html





