電池分野での主な用途
- CNT分散(低粘度〜中粘度系)
- カーボンブラック分散
- 導電助剤の均一分散
- ナノ粒子分散・微粒化
- 固形分スラリーの均一化
公開日:2026年6月22日
スマートフォンからEV(電気自動車)、産業用蓄電システムまで、二次電池は現代社会に不可欠なエネルギー源です。その性能を決定づける最重要工程のひとつが、電極スラリーの調製と分散です。
「電池性能は材料で決まる」と考えられがちですが、世界的な化学学会である英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の専門書では、電極の製造品質こそが電池性能を左右する重要な要素として次のように紹介されています。
The quality of the electrodes has a decisive influence on the performance of the battery. If the electrodes are not precisely made, it is useless, no matter how hard you work in the subsequent processes.
(訳)電極の品質は電池性能に決定的な影響を与える。電極が正確に製造されていなければ、その後の工程をどれほど最適化しても意味をなさない。
出典:Nakamura, H. (2025). Li-ion Batteries. RSC Foundations(※1)
本ページでは、リチウムイオン電池(LIB)を例に出しながら、全固体電池・ナトリウムイオン電池などにおける電極製造の基礎と分散技術の重要性を解説します。
「電池」と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。以下にアイメックスが分散・混練ソリューションを提供する主な二次電池を示します。
電池は、正極・負極・セパレーター・電解液の4つの主要部材で構成されています。以下はリチウムイオン電池を例に基本構造を示した図です。充放電は、リチウムイオンが正極と負極の間を電解液を介して往来することで行われます。
リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池は構造が最も似ており、セパレーターも電解質も液体系で、製造プロセスもほぼ同じです。負極材料がグラファイトからハードカーボンに変わる点が最大の違いです。
構造が少し違ってくるのが全固体電池です。全固体電池はセパレーターがなくなることが最大の特徴で、固体電解質が「セパレーターの役割」と「電解質の役割」を同時に果たします。このため製造プロセスが根本的に異なり、固体電解質の微粒化・均一分散がリチウムイオン電池の電極スラリー分散に相当する工程になります。
ここで、例としてリチウムイオン電池の各部材料を見ていきましょう。
| 部材 | 材料名(放電時) | 分散・微粒子化の役割 |
|---|---|---|
| 正極(positive electrode) | LiCoO₂・LiNiO₂・LiMn₂O₄・LFP・NMC系・NCA系など各社独自配合 | 活物質・導電助剤・バインダーを均一分散。材料・配合比は各社が厳重に管理 |
| 負極(negative electrode) | グラファイト・Si系・チタン酸リチウム(Li₄Ti₅O₁₂)など | 均一分散・微粒化で塗工均一性と電極特性を確保 |
| セパレーター | ポリオレフィン系多孔膜・セラミックコーティング | セラミックスラリーの均一塗工に分散技術が関与 |
| 電解質 | 液体電解質(LiPF₆系等)・固体電解質(ガラスセラミックス・硫化物・酸化物系) | 固体電解質の微粒化・均一分散で固体電池の性能が決まる。 |
正極材料は代表例を示しています。実際の配合はNMC・NCA・LFPなどを基本としつつ、Ni比率・コーティング・添加元素など各社が独自に最適化しています。ビーズミルが対応する材料の範囲については個別にご相談ください。
電池電極の製造は、活物質や導電助剤を分散させる「混練・スラリー化」を起点に、塗工・乾燥・プレス・スリットへと進みます。なかでも混練・スラリー工程の分散品質は後工程すべてに影響するため、ビーズミルや3本ロールミルによる適切な分散・微粒化が、電池性能を決める鍵となります。
電極スラリーとは、活物質・導電助剤・バインダー・溶剤を均一に分散させた液状材料であり、正極または負極を形成するためのペースト状材料です。この電極スラリーの分散状態や粒子制御によって以下の性能が左右されます。
特に近年では、CNT(カーボンナノチューブ)や小径活物質、高固形分化への対応が求められており、従来以上に高度な分散・混練技術が必要になっています。
電池電極では単に混ぜるだけでは不十分です。特にCNT・カーボンブラックは凝集しやすく、分散不足が導電ネットワーク不良・局所発熱・塗工ムラ・電極抵抗増加・サイクル劣化・歩留まり低下を引き起こします。
一方で過剰分散は活物質・CNTの破壊や粘度異常を招く場合もあります※3
重要なのは「必要な分散を、必要なだけ行うこと」。材料・配合・目標性能によって最適条件が異なる高度な技術領域です。

A bead mill is a wet media dispersing machine that pulverizes and disperses particles in a slurry by agitating the media…(中略)…They are used when you want to produce fine particles down to the sub-micrometer level, such as conductive additives, or when you want to mix active materials at the sub-micrometer level.
出典:Nakamura, H. (2025). Li-ion Batteries.RSC Foundations※1
(訳)ビーズミルは湿式メディア分散機であり…(中略)…導電助剤のようにサブマイクロメートルレベルの微粒化を求める場合や、活物質をサブマイクロメートルレベルで混合したい場合に使用される。

3本ロールミルは、3本のロール間に発生する高いせん断力によって凝集を解砕する分散機です。高粘度ペーストの処理を得意とし、少量バッチでの精密な分散制御に強みがあります。
2つの装置は競合ではなく、材料特性・粘度・処理目的によって選択または組み合わせて使用します。
| 観点 | ビーズミル | 3本ロールミル |
|---|---|---|
| 粘度範囲 | 低~中粘度に強み | 高粘度ペーストに強み |
| 適した処理の種類 | ナノ~サブマイクロメートルの微粒子化に対応 | 高粘度系の凝集解砕に強み |
| 処理規模 | 連続・高流量。量産ライン向き | 少量精密処理向き |
実際には「前処理にビーズミル → 仕上げに3本ロールミル」など複合的に活用するケースも多く、最適な選定には材料ごとのラボ検証が不可欠です。
アイメックス株式会社は、正極・負極・セパレーターコーティング・固体電解質(酸化物系等)など幅広い電池部材の分散・微粒化に対応しています。装置販売にとどまらず、材料特性の把握からスケールアップ設計まで一貫した技術提案を行います。
高容量化に向けてSi系負極の採用が広がっていますが、シリコンは充放電時の体積変化が大きく、多孔質化やカーボンとのナノ複合化といった粒子構造の制御が求められます。※4
また、ドライ電極プロセスは溶剤を使わず乾式で電極を成形する製法で、Tesla社がドライ電極プロセスで注目を集め、業界全体で研究開発が加速しています。ビーズミル・3本ロールミルのような湿式分散とは異なるアプローチですが、材料評価・粉体プロセスとの連携が今後の課題となっています。※5
さらに近年は、AIデータセンターの拡大に伴い、瞬間的な電力変動に対応できる高入出力(ハイパワー)な蓄電ソリューションへの需要が高まっており、出力特性の向上には導電助剤(CNT・カーボンブラック)の均一分散による低抵抗な導電ネットワーク形成が一層重要になります※7
これらに対応するには単なる装置導入ではなく、「材料・分散・塗工・量産」の全体最適化が不可欠です。
電極スラリー分散に関してよくある質問をまとめました。
Q.
電池スラリーにはビーズミルと3本ロールミルのどちらを使うべきですか?
A.
材料特性・粘度・分散目的によって異なるため、一概には決まりません。
・ビーズミル:ナノ粒子分散・高流量処理・微粒化用途に強み
・3本ロールミル:高粘度ペーストや少量バッチでの高せん断分散に適し、全固体電池用ペースト・Si系混練にも活用
実際には「前処理にビーズミル → 仕上げに3本ロールミル」のように複合活用するケースも多くあります。最適な選定はアイメックスのラボ試験を通じてご支援します。
Q.
ビーズ径の選び方を教えてください。
A.
材料・粘度・目標粒度によって大きく異なります。「小径が常に良い」とは言えず、高粘度・高固形分系では大径が有効なケースもあります。ラボテストによる検証を推奨します。
Q.
電池スラリーで重要な管理項目は何ですか?
A.
代表的な管理項目は以下の通りです。
| 管理項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 粒度分布 | D50・D90で凝集の有無を定量確認。分散良否の最重要指標。 |
| 粘度 | 塗工適性に直結。経時変化(チキソ性・ゲル化)の監視も必要。 |
| 分散状態 | グラインドゲージ・SEM観察で凝集塊残留を確認。 |
| 導電性 | CNT・カーボンブラックの分散不良は内部抵抗増加に直結。 |
| 温度 | 処理中の発熱を管理。過剰昇温はバインダー変性の原因になる。 |
| 異物 | 金属コンタミは短絡・発火リスクに直結。厳格管理が必須。 |
| スラリー安定性 | 経時沈降・ゲル化の有無を確認。保管・輸送条件の設計にも影響。 |
| 塗工適正 | スジ・ムラ・ピンホールが出ないよう粘度・固形分濃度を総合管理。 |
弊社では電極スラリーの課題に応じた最適なビーズミルや、条件設定の見直しを提案しています。
その他セラミックス、電子材料、印刷インキ、化粧品、塗料など、あらゆる分野の分散に対応可能です。お気軽にお問い合わせください。
※1 Nakamura, H. (2025). Li-ion Batteries. RSC Foundations No.4, Royal Society of Chemistry.
※2 富士フイルム和光純薬「固体電解質材料(酸化物系・硫化物系の種類と特性を解説)」https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/category/02207.html
※3 Liu, Y. et al. (2025). CNT distribution governs lithium-ion battery cathode performance. Chemical Engineering Journal. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1385894725114617
※4 経済産業省「蓄電池産業戦略の推進に向けて(次世代技術の開発)」(2025年1月)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy2/shiryo3-3.pdf
※5 電子デバイス産業新聞「LiB製造プロセスの主流となるか『ドライ電極』」
https://www.sangyo-times.jp/article.aspx?ID=13372
※6 EV DAYS(東京電力エナジーパートナー)「全固体電池をわかりやすく解説。従来の電池との違い、トヨタ・日産・ホンダの開発状況」https://evdays.tepco.co.jp/entry/2024/01/15/000053
※7 経済産業省「蓄電池・電源産業戦略」(2026年6月) https://www.meti.go.jp/press/2026/06/20260602001/20260602001-1r.pdf
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