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CNT(カーボンナノチューブ)とは?種類・用途・電池電極への分散技術を解説

カーボンナノチューブ

公開日:2026年7月10日

 

CNT(カーボンナノチューブ)とは、炭素原子が作るナノメートルサイズの筒状構造体です。金属並みの高い電気伝導性・機械強度・熱伝導性を持ち、少量添加で大きな機能改善が期待できる材料として、電池電極・導電フィルム・複合材料など幅広い分野で活用されています。

本ページでは、CNTの種類・特性・用途・カーボンブラックとの違いを解説した上で、電池電極分野での分散技術・条件設定・評価方法・スケールアップの注意点まで実務に直結する情報をお届けします。

 

 

CNT分散の最大の課題:解砕と過分散の両立

CNTはvan der Waals力(分子間引力)が非常に強く、特にアスペクト比が高いものほど絡み合いやすい性質があります。この凝集を解砕しなければ電極内に均一な導電ネットワークが形成されません。一方で「分散しすぎ」にも注意が必要です。

Over-dispersion fragmented the conductive network, weakening electron transport despite improved CNT–active material contact.
(訳)過分散は導電ネットワークを断片化させ、CNTと活物質の接触は改善されるものの、電子伝導性を低下させた。
出典:出典:Liu, Y. et al. (2025). Chemical Engineering Journal.(※1)



項目 分散不足(Undispersed) 適正分散(Optimally Dispersed) 過分散(Over-dispersed)
主な状態 凝集状態
CNTが分散したままの状態
ネットワーク形成
CNT凝集を解砕しつつ、チューブ長を維持した状態
CNTの分断
CNTが切断・短尺化した状態
主な原因 せん断力が不十分・処理時間が短い 解砕とCNT長さ維持のバランスが最適 せん断力が過大・処理時間が長すぎる
電極への影響 導電パス不均一→内部抵抗増加・局所発熱 導電ネットワーク最大化→低抵抗化・高出力化・長寿命化 CNT断片化→導電ネットワーク分断・電子伝導性低下

重要なのは「壊しすぎない分散」。CNTの長さを保ちながら凝集を解砕し、導電ネットワークを最大化する条件を見つけることがCNT分散の技術的核心です。

 

CNTとは?

グラフェン構造
CNTは、炭素原子が六角形の網目状(グラフェン構造)に並んだシートを円筒状に丸めた構造のナノ材料です。1991年に飯島澄男氏が多層CNT(MWCNT)を報告し(※2)、1993年には飯島・市橋らとBethuneらによってそれぞれ独立に単層CNT(SWCNT)が報告されて以来(※2-2)、その優れた特性から世界中で研究・応用開発が進んでいます。

鋼鉄の数十倍ともいわれる高い強度を持ちながら、非常に軽量であることが特徴です。また、優れた導電性・熱伝導性を有するため、導電助剤や放熱材料として幅広い分野で活用されています。

特にリチウムイオン電池や全固体電池などの電極材料では、CNTが導電ネットワークを形成することで電子の移動を促進し、電池性能の向上に貢献します。その一方で、CNTは繊維状で凝集しやすいため、性能を十分に引き出すには適切な分散技術が不可欠です。

 

CNTの種類:SWCNTとMWCNT

種類 構造 主な特性 電池電極での利用
SWCNT (単層カーボンナノチューブ)
単層カーボンナノチューブ
グラフェンシート1枚を巻いた構造。直径0.82nm程度 電気伝導性が非常に高い。柔軟性が高くネットワーク形成能に優れる。ただし製造コストが高い 高性能用途・次世代電池向け。少量での高導電化が可能
MWCNT (多層カーボンナノチューブ)
多層カーボンナノチューブ
複数のグラフェンシートを同心円状に巻いた構造。直径5〜50nm程度(電池導電助剤には細径の5〜15nm程度が主流) SWCNTより導電性はやや劣るが安価・大量生産が可能。機械的強度が高い LIB電極の導電助剤として現在主流。量産対応しやすい

電池電極の導電助剤として量産規模で使用されているのは主にMWCNTです。SWCNTはコストが高いため、高性能電池や特殊用途向けに研究・一部採用が進んでいます。

CNTの主な用途

CNTは電気的・機械的・熱的特性が優れているため、電池以外にも幅広い分野で活用されています。

分野 具体的な用途 CNTの役割
電池電極(二次電池) LIB正極・負極の導電助剤 少量添加で導電ネットワークを形成。CBより少量で高効果
導電フィルム・塗料 透明導電膜・帯電防止コーティング 高い導電性と透明性を両立
複合材料 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の補強材 引張強度・剛性向上
半導体・電子部品 トランジスタ・センサー ナノスケールの電子特性を活用
医療・バイオ 薬物送達・バイオセンサー 生体適合性と微細構造を活用

中でも電池電極向けの需要が最大の成長ドライバーとなっており、Mordor Intelligence調査(2025年)によると2025年のCNT市場規模は約69億米ドル、2030年には約174億米ドルへの成長が予測されています(年平均成長率約20%)。(※3)

 

高度な分散には湿式ビーズミルがおすすめです。
湿式ビーズミルはナノレベルの分散を行うことができます。
様々なビーズミル機種

ビーズミルによるCNT分散:条件設定と注意点

ビーズミルは低〜中粘度のCNTスラリーに広く活用される湿式分散機です。ビーズのせん断力・衝撃力でCNTの凝集を解砕し、連続処理・スケールアップにも強みがあります。

条件項目 CNT分散での考え方
ビーズ径 材料・粘度・目標粒度によって最適径が異なる。カーボン系では小径が有効なケースがある一方、高粘度・高固形分系では大径が適する場合もある。ラボテストで確認することが重要
ビーズ材質 ジルコニア製が一般的。金属コンタミが短絡リスクに直結するため材質選定が重要
処理時間・パス数 過剰処理はCNT断片化を招く。D90値を処理ごとに測定し、変化が飽和した時点を最適条件の目安とする
温度管理 処理中の発熱を管理。過剰昇温はバインダー変性・スラリー劣化の原因
スラリー粘度 低〜中粘度に強み。高粘度系は3本ロールミルとの組み合わせを検討
固形分濃度 CNT濃度が高いほど分散難易度が上がる。濃度・処理条件の同時最適化が必要

 → ビーズミルの原理・種類の詳細は「ビーズミルとは?(原理・構造)」ページをご参照ください。

 

CNTスラリーのビーズミル処理実績ございます。
分散についてお気軽にご相談ください。


高粘度CNTへの対応:ビーズミル・3本ロールミルの使い分け

観点 ビーズミル
ビーズミル
3本ロールミル
3本ロールミル
CNTスラリー粘度 低〜中粘度系に強み 高粘度CNTペーストに強み
CNT解砕力 ビーズとの衝突・摩擦で均一解砕 ロール間の高せん断で強力解砕
過分散リスク 処理時間・パス数の管理が重要 ロールギャップ調整で精密制御しやすい
金属コンタミ ビーズ分離方式、
ビーズ材質(ジルコニア等)で管理
ロール材質で管理
処理規模 連続・高流量。量産ライン向き 少量精密処理向き

特にCNT分散では、低粘度系の解砕にビーズミルを用い、高粘度仕上げに3本ロールミルを組み合わせるケースが報告されています。最適な選定は材料・CNT濃度・目標粘度によって異なります。


CNT分散の評価方法

CNT分散の良し悪しは、複数の指標を組み合わせて判断します。下記のポイントを順に確認することで、処理条件が適切かどうかを見極められます。

粒度分布を測るD50・D90

D90値で凝集塊の残留を定量確認。処理パスごとにD90を測定し、変化が飽和した時点が最適処理条件の目安。

粘度を確認する

塗工適性に直結。急激な粘度低下はCNTネットワーク崩壊のサインの可能性がある。

分散状態を観察する目視・SEM

グラインドゲージで凝集塊の残留を確認。SEM観察でCNTネットワークの形成状態を評価。

電極導電性を測る

電極シートの電気抵抗を測定。CNT分散が良好なほど抵抗値が低くなる。

スラリー安定性を見る

調製後の経時粘度変化・沈降の有無を確認。

「何パス処理すれば良いか」への答えは「D90が飽和した時点」です。それ以上処理を続けると、過分散によるCNT断片化のリスクが高まります。

 

 

CNTとカーボンブラック(CB)の違い

電池電極の導電助剤として比較されることが多い2つの材料ですが、形状・導電メカニズム・用途特性が大きく異なります。

比較観点 CNT(カーボンナノチューブ) CB(カーボンブラック)
形状 繊維状(直径数〜数十nm・長さ数μm〜数十μm) 粒子状(一次粒子径20〜100nm程度)
導電メカニズム 繊維が活物質間を橋渡しする「長距離導電パス」を形成 粒子が連鎖した「ストラクチャー」で導電パスを形成
添加量 少量(0.5〜2wt%程度)で高い導電性を発揮 CNTより多い添加量が必要(1〜5wt%程度)
コスト 高価(CBの数十〜数百倍) 安価・大量生産が容易
分散難易度 高(van der Waals力による強い凝集・絡み合い) 中(凝集するがCNTより解砕しやすい)
Si系負極との相性 体積膨張に追従しやすい(柔軟性が高い) 膨張収縮でネットワークが切れやすい
主な用途 高性能電池・Si系負極向け。CBとの混合系も多い 汎用LIBの導電助剤として広く使用

近年はCBとCNTの混合系が主流になりつつあります。CBで基本的な導電ネットワークを形成しつつ、少量のCNTで長距離導電パスを補強することで、添加量を増やさずに高い導電性を実現しています。実際に、CNT分散体を正極用導電助剤として採用し、従来のCBより少量で高い導電性を付与してリチウムイオン電池の高容量化・高出力化を実現した事例も報告されています。(※4)

ビーズミルや3本ロールミルの基礎資料から応用資料まで、
ダウンロードできる技術資料を豊富に取り揃えています。

スケールアップ時の注意点

課題 内容 対策のポイント
滞留時間の変化 ラボ機と量産機でチャンバー容積・流量が異なる 比エネルギーを基準に条件を設計する
発熱量の増大 処理量が増えるほど発熱しやすい 冷却能力の確認と温度管理条件の再設定
ビーズ挙動の変化 スケールが変わるとビーズの充填状態・流動が変化 ビーズ径・材質を同一にして変数を最小化
せん断履歴の累積 パス数・処理速度が変わるとCNTへのダメージ量が変化 処理ごとにD90を測定して前後の挙動を比較

 

アイメックスのCNT分散ラボテスト・ご相談

 

  • CNT分散条件が決まらない・量産で再現できない
  • 適切なビーズ径・処理条件を検証したい
  • D90目標値の設定・達成方法を相談したい
  • ラボ機から生産機へのスケールアップを検討している
  • CB+CNT混合系のスラリー設計に困っている 

 

試作テスト・装置レンタル・装置選定相談受付中!
「この処理物の処理実績は?」「この装置で処理テストをしてみたい」など
気になる点がありましたら、お気軽にお問合せください。

CNTの分散に関するよくあるご質問

CNTの分散に関してよくある質問をまとめました。

 

Q.

CNTはなぜ凝集しやすいのですか?

A.

CNTはvan der Waals力(分子間引力)が非常に強く、特にアスペクト比が大きいものほど絡み合いやすい性質があります。ビーズミルや3本ロールミルのせん断力で凝集を解砕しますが、過剰処理はCNT断片化を招くため条件設定が重要です。

Q.

「分散しすぎ」はなぜ問題になるのですか?

A.

過分散によりCNTが短く断片化すると、電極内の長距離導電ネットワークが失われ電子伝導性が低下します。処理パスごとにD90値を測定し、飽和した時点で処理を止めることが重要です。

Q.

CNT分散のラボテストはどのように進めますか?

A.

①試験依頼書の提出 ②来社テスト(ビーズ径・処理条件の比較) ③粒度分布・粘度の測定 ④技術員による考察・機種提案・スケールアップ条件の提示、というフローで対応しています。まずはお問い合わせください

 

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ビーズミル・3本ロールミルに関するお問い合わせ

 

出典・参考情報

※1 Liu, Y. et al. (2025). CNT distribution governs lithium-ion battery cathode performance. Chemical Engineering Journal. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1385894725114617
※2-1 S. Iijima & T. Ichihashi「Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter」Nature Vol.363 (1993)
※2-2 D. S. Bethune et al.「Cobalt-catalysed growth of carbon nanotubes with single-atomic-layer walls」Nature Vol.363 (1993)(SWCNT報告の原典)
※3 Mordor Intelligence (2025). Carbon Nanotubes Market Size & Share Analysis. https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/carbon-nanotubes-market
※4 artience(トーヨーカラー)「LiB用CNT分散体がプライムアースEVEエナジーに採用」(2024年) https://www.artiencegroup.com/ja/news/2024/24020601.html

 

 

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