粒度分布とは?~測定方法別の特徴、管理指標について~
なぜ粒度分布を把握する必要があるの?
例えば電子写真複写機における複写画像の品質は、主にトナーの粒度分布に依存するとされています。※2
このように粒子を評価する粒度分布測定は、粉体を使用し製品を生み出す会社にとって避けては通れない工程となっています。
粒度分布測定の方法は、測定対象の粒子の大きさによって一様ではありません。また、得られる粒子径情報の意味合いも様々で、対象粒子径の大きさや目的に応じた適切な計測技術の選択が必要です。※3
弊社は超微粉砕を行う湿式のビーズミルを製造しています。今回は、μm~nmオーダーの粒度分布について詳しく見ていきます。
「ビーズミルとは?(原理と構造)」についてはこちら
粒度分布の測定方法
粒度分布を測定する方法は多岐に渡ります。以下弊社がビーズミル粉砕・分散処理試験で使用している粒度分布測定器の特徴(メリットとデメリット)をまとめています。粒度分布測定の目的や状況に応じて適切な測定器を選択することが大切です。
各測定方法 | SEM | 動的光散乱法 (DLS) |
レーザー回折・ 散乱法(LD) |
沈降速度法 | 個数カウント法 |
---|---|---|---|---|---|
測定領域 | サブμm~ | 数nm~サブμm | サブμm~数mm | 数十nm~数百μm | サブμm~数百μm |
サンプル調整 (希釈工程) |
必要なし | 希釈が必要 | 希釈が必要 | 必要なし | 多量の希釈が必要 |
特徴(メリット) | ・粒子を直接観測でき、幾何学径がわかる ・サブミクロ~ナノ領域の観測が可能 |
・ナノ領域の測定が可能 ・測定原理的に粒子屈折率が影響しないため、異種の粒子が含まれているサンプルにも対応可 |
・分布が広い粒子(サブµm~数mm)を測定可能 | ・濃厚系に対応しており、多くのスラリーで原液評価(希釈無し測定)が可能 | ・粒度分布計では観測できない粗大粒子の測定が可能 ・粒子個数による評価が可能 |
デメリット | ・観測する視野によって観測結果が偏る。 ・前処理工程(乾燥)が必要であり、乾燥凝集等が発生する可能性がある |
・µm領域(測定中沈降するサンプル、ブラウン運動が顕著でない粒径)には不向き | ・異種の粒子が含まれるサンプルの測定でも、屈折率入力は1つ | ・結果が出るのに時間を要する | ・粒子数が一定以下になるまで多量の希釈が必要 |
粒度分布の種類
粒度分布には、主に”個数基準”と”体積基準”があり、どの基準で測定するかでグラフは大きく変化します。粒度分布測定の目的に合わせて基準を選択します。以下同じサンプルの粒度分布を”個数基準”、”体積基準”でグラフにしたものです。個数基準では1μm以下の頻度が高く見えて、体積基準では1μm以上の粒子が多くあるように見えます。
個数基準 | 体積基準 | |
---|---|---|
グラフ | ||
特徴 | 小さい粒子が誇張されるので、微粒が発生しているかを判断するのに適している。 | 大きい粒子が誇張されるので、粗粒・粗大粒子があるか判断するのに適している。 |
頻度分布 | 積算分布 | |
---|---|---|
グラフ例 |
メジアン径 | D50とも呼ばれています。粉体の粒子径分布を2つに分けた際、小さい方と大きい方が同じ数となる径です。 背の順で考えると分かりやすいかと思います。背の順で並んだ際に前にも後ろにも同じ数並んでいる、ちょうど真ん中の粒子がD50です。 D50の「D」は、英語で”直径”という意味のDiameterの頭文字を取っています。 |
---|
メジアン径(D50)は、ビーズミル処理能力の指標
弊社の製品リーフレットでは、ビーズミル処理能力を分かりやすく比較するために、処理事例の頻度分布グラフにD50の値を記載しています。以下はNeo-アルファミル(NAM-1)の処理事例です。Neo-アルファミルで処理した後のD50は17nmとなり、ナノレベルでの処理が可能ということがお分かりいただけるかと思います。
シャープな粒度分布とは?
ビーズミル業界ではよく「シャープな粒度分布にしたい」というお客様からのご要望があります。
一体「シャープな粒度分布」とはどんな粒度分布なのでしょうか?
頻度分布をグラフにした際、「D1~D100の幅が狭い」ほどシャープだと言われています。シャープの反対は”ブロード”と呼ばれていて、シャープに比べるとグラフの山は低く、幅は広くなっています。
2つの粒度分布がある時、どちらがどのくらいシャープな粒度分布か比較するためにはどうしたら良いでしょうか。
見た目だけでは判断がつかないと思いますので、簡単な計算をして数値化すると良いでしょう。
例えば以下の二つのグラフA,Bがあります。
グラフA
D10 | 0.147μm |
---|---|
D50 | 0.376μm |
D90 | 1.610μm |
グラフB
D10 | 0.125μm |
---|---|
D50 | 0.250μm |
D90 | 0.623μm |
見た目では、Bの方がシャープに見えますが…どのくらいシャープなのでしょうか。
そこで、D10,D50,D90の数値を使い、以下の計算式に当てはめて計算してみます。
計算の結果、値が「1」に近い方が、シャープであると考えられます。
実際に計算してみましょう。
グラフA
(D90-D10)÷D50=
(1.61.-0.147)÷0.376=
3.89
グラフB
(D90-D10)÷D50=
(0.623-0.125)÷0.25=
1.99
1に近いほどシャープなので、Bのグラフの方がAのグラフより約1.95倍シャープな粒度分布と言えます。
引用文献
1.「現場技術者向け 初歩から学ぶ粉体技術」2009,内藤牧男・牧野尚夫
2.義村尚光「小粒径トナーの画質に及ぼす影響」『電子写真学会誌』第31巻,第1号,1992,459-464
3.高野正雄「粉体粒度分布測定技術」『日本画像学会誌』第46巻,第6号,2007,459~464
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